今回は主に海外で使われている無料(オープンソース)の電子カルテの話。
どこの病院も億単位の電子カルテを5-6年毎に買い替えており、そのあまりの高コストには皆さん手を焼かれていると思われます。
私もつい最近知りました。海外にはこのような無料の電子カルテがあって、しかも結構メジャーな存在だということを。
openEMRについて
openEMRは、世界中で利用されているオープンソースの電子カルテ/医療情報システムです。
2002年に初回リリースされ、現在では世界10万医療機関、患者累計2億人分の電子カルテとして利用されています。
PHPで記述されており、最新のバージョンは8.0
米国を中心に普及しており、多言語対応・国際仕様に対応しています。
診療記録の管理だけでなく、以下のような機能を統合しています。
- 患者情報管理(Patient Demographics)
- 電子カルテ(EHR)
- スケジューリング
- 処方管理(e-Prescribing)
- 請求・会計(Billing)
- レポート作成
主な特徴
オープンソース=低コスト
ライセンス費用が不要なため、導入コストを大幅に抑えられます。
中小規模のクリニックや研究用途にも適しています。
高いカスタマイズ性
ソースコードが公開されているため、以下が可能です。
- ワークフローの調整
- UIの変更
- 独自機能の追加
ITリソースがある施設では「自院仕様」に最適化できます。
Webベースで運用可能
ブラウザで動作するため、特別なクライアントソフトは不要。
- 院内LAN
- VPN経由のリモートアクセス
など柔軟な運用ができます。
国際標準への対応
HL7などの標準規格に対応しており、他システムとの連携も可能です。
ただし日本の医療制度(保険診療)への完全適合には調整が必要です。
当然、日本の2年おきの診療報酬改定にも対応してません。(自力対応が必要です)
メリットとデメリット
メリット
- 初期費用・ランニングコストが低い
- ベンダーロックインがない
- セキュリティを自分で管理できる
- 自由度が非常に高い
デメリット
- 日本の保険制度への対応が不十分
- 導入・保守にIT知識が必要
- サポートは基本コミュニティベース
- UIは商用製品に比べやや粗い
ブラウザベースなので、レスポンスの速さが若干気になりますが、世界中で多数使用されていますので問題ないのでしょう。
どんな施設に向いているか?
何しろ困った時に業者を呼ぶことが出来ないので、何事も自力解決がデフォルトになります。
つまり医療機関内にITに強いスタッフがいることが必須条件となります。
これは電子カルテ代は浮かせることが出来ても、その代わり人件費が余分に掛かるということを意味します。
導入時のポイント
インフラ設計
- Linuxサーバ(例:Ubuntu / Debian)
- Webサーバ(Apache / Nginx)
- データベース(MySQL / MariaDB)
- 動的処理を行うプログラム言語(PHP)
LAMPを組み上げて運用できる人材が必要です。
LAMP = Linux + Apache + MySQL/MariaDB + PHP/Perl/Python のOSS(無料ソフト)4点セット
セキュリティ対策
医療情報を扱うため、以下は必須条件です。
- HTTPS化(TLS)
- アクセス制御
- ログ監査
- 定期アップデート
つまり十分なセキュリティ対策人員も必要となります。(侵入された時に業者のせいには出来ない)
最近、この電子カルテに38件の脆弱性が発見されたとの報告もされており、日頃からの十分なセキュリティ対策も必須です。
日本での運用への適応
日本独自の問題として、日本の診療報酬体系に適応させる(2年毎の改定対応含む)作業が必要です。
まとめ
openEMRは「自由度」と「コストパフォーマンス」に優れた電子カルテと言えます。
一方で、導入・運用には一定のITリテラシーが求められます。
つまりそれ相応の人材(=人件費)が必要となります。
あとは何といっても最大の障壁は、複雑怪奇な日本の診療報酬体系への適応作業でしょうね。
お国は診療報酬算定のAPIとか作ってくれないのかしら。

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